酔いとキス

廉造がいきなりうちに近付いて来よったさかい、逃げようおもて後ろに下がったら廉造がどんどん前に進んでくる。

「な、何やねん!」
うちがそう言うても廉造は何も答えてくれへん。
それどころかどんどん近付いて来よる。

トン、とうちの背中が壁に当たった。
うちはもう後ろに下がれへん。
廉造の顔はもうすぐ傍まで来とって、うちは思わず目を閉じた。
その瞬間、自分の唇に温かいモノを感じた。

ゆっくり目を開けてみたら、目の前にはドアップの廉造の顔。

――うちは廉造に、キスされとるんや。

そう気付いた。

ハッと意識が戻り、廉造を必死に押して離れようとする。
せやけど廉造の力は意外と強うで敵わへんかった。

もうダメだ。うちがそう思うた瞬間、廉造の唇、顔がうちから離れていく。

「アホ!名前ちゃんに何てことしとんねん!今すぐ土下座して謝り!」

廉造を掴みながら柔兄が怒鳴る。
うちを助けてくれたんは柔兄やった。

で、怒鳴られとる廉造は…、柔兄に掴まれながら寝とった。


ふとテーブルのほうから聞こえた声に耳をすますと、「なあ、此処に置いとった焼酎知らんか?」
「いいえ、知りませんけど」
という会話。
志摩家の人が、さっき廉造が飲み干したコップを持ちながら話しとった。

……て、へ!?
焼酎!?
廉造が飲みよったん、焼酎やったんか!?

せやからあないに顔が真っ赤に…
やなくて!
酔うた勢いでうちにキスするて、有り得へん!

つーか、絶対に許さへん!



ふと、寝とる廉造のほうに顔を向ける。
そこには、にやにやしながら寝とる廉造の姿が。

一体どないな夢見とんねん!

と、ツッコミたくなるような姿や。
でも、その廉造を見とると 何故か顔が綻ぶねん。
「昔と全っ然、変わってへんなー…」

うちはそう言うてその場を立ち、志摩家の皆に挨拶をして家に帰った。