お花見 / 奥村兄弟

花より団子ってことわざあるけど、まさにわたしにぴったりのことわざだと思うんだよね!
だってお花見に来てもお弁当やお菓子にしか目がないんだもん。

むしろわたしにとっては最高のイベントだね!
他の女子はというと、花より男子って感じかな。

みんな雪男のことばーっかり見てんの。

『桜が似合う〜』とか『絵になるよね〜』とか。

へーへー成績優秀、容姿端麗な人は違うでごぜーますねー。

「ねえ燐、この卵焼き美味しすぎ!」

「だろ!結構自信作なんだよなー」

鼻を高くしてどや顔をする燐。

でも本当にこの卵焼きは今まで食べてきた卵焼きの中でずば抜けて美味しい。

「燐は料理が出来ていいなー」

燐の作ってきたお弁当を口に含みながらその味にとろけるゆう。

「お前料理出来ねーの? 何なら俺が教えてやるよ!」

親指を立ててとびきりのスマイルを向けてきた。

ああ、なんて優しいんだ燐は…。
それに比べて雪男なんていつも勉強ができないわたしを見下すし。

「ん?ゆうさん、今何か言いましたか?」

背中がぞっとして後ろを振り向くと、黒い笑みを浮かべた雪男が立っていた。

「おー雪男!お前も食えよ!」
「うん、そのつもりだけど」

そう言ってシートの上に座る雪男から、何かプレッシャー的なものを感じる。…気がした。

わたしは水筒のお茶を飲んで自分を落ち着かせる。


「お、奥村くーん! よかったら一緒に、散歩しませんかっ」

少し離れたところから女の子3人グループが雪男に声をかける。

それを見た雪男は少し曇った顔をしたが一瞬にして笑顔を作って見せた。

これが所謂営業スマイルというやつか、とわたしは納得した。

「すいません、今ご飯を食べているのでまた後で」

はー、上手いなー返しが。
なんか女慣れしてそう。

「行かないの?せっかくのお誘いなのに」
「そうだそうだ!俺なんか誘われねえのに…っ」

愚図る燐を横目に雪男は何だか寂しそうな顔をする。
「昔は父さんとよくこうやって桜を見たね」

桜の木を見る雪男は切なげな表情をするが、何だか心が温かくなるようなそんな気持ちにわたしはなった。

「みんなでお花見って、いいよね」

雪男に向かって にっと笑うゆう。

それを見た雪男は少々驚くもすぐに笑顔を返す。

また来年も、こうやってみんなでお花見したいな〜って。