「…いつもここらへん通らないはずだから大丈夫だよ、ね…?」
「それに今日は午後から上に呼ばれてるって風間さんと迅さんが言ってたの聞いたし捕まらないはず」
ロビー横の階段の角で廊下を見回して警戒態勢をとる。
この辺りに自分が最も警戒している人物がいないことを確認するとホッと息をもらした。
「……ッわ!」
「きゃぁッッッッ」
急に後ろから声をかけられ、肩を叩かれたゆうは全身をビクッと震わせて短い悲鳴をあげ尻もちをつく。
「ぶはっ案外可愛い声出せんのな。…で、誰に捕まらないって?」
ゆうを後ろから驚かせた本人はニシシッと笑う。
「出水〜〜〜、よくも驚かしてくれたな〜!…って、しっ!静かに!そしてしゃがみなさい早く!」
そう言ってゆうは出水の腕を引き自分の横に屈ませる。
「なになに、一体何してるわけ?かくれんぼ?本部でかくれんぼとか緑川ですらしねーぞ」
「まぁかくれんぼみたいなもんだけどそんな生優しいもんじゃないの、命懸け」
「へぇ〜楽しそうなことしてんじゃん。で、オニは誰?二宮さん?それとも風間さん?」
「どーしてその2人だと思うの」
「ん?何となく?まぁゆういっつも二宮さんに首根っこ掴まれて連行されてっし〜。風間さんは単純にゆうへのダメ出しが多いから?」
「的確なところついてくるじゃん。けど今回はその2人じゃない。もっとタチ悪い。一回捕まると下手したら一生解放してもらえないかもしれないの、だから命懸け」
「タチ悪い人ね〜ま、俺に任せとけって」
「えっ助けてくれんの!?神〜!さすが出水様〜!…てかさっきから気になってたんだけど、どうしてトリオン体なわけ?」
出水はゆうの問いに何も答えず何かを含めたような笑みを浮かべてポケットをガサガサし始めた。
「ほい、手ぇ出して」
「…?…なに?」
出水はゆうの前にグーにした手を出して言った。
その出水の言葉に何も疑わずゆうは手を差し出した、瞬間。
ガシッ
「ふぇっ!?」
「はい、捕獲。……あー、俺です聞こえます?今捕まえましたんで3階ロビーの右側の階段までお願いします」
「あ、あのぉ…?出水くん?一体誰とお話を…?」
「ははっ、ゆうごめんな〜。俺も隊長命令には逆らえねーからさ」
「たい…ちょう…?めいれ…??…もしかしてあんた!騙したな!はーーーなーーせえええええええ!」
ゆうは出水の腕を離そうと力を入れるが相手は男、そしてトリオン体。さすがに生身の女では力では敵わなかった。
「ばっ、そんな暴れんなって!俺だってお前に痛い思いさせたくねーんだから!」
片手を掴まれただけだったがゆうが暴れ始めたために必死で抑えるために両手を掴み動きを制止する出水。
トリオン体のため相手がどれくらい負荷を負っているか分かりづらいため生身の女の子相手に慎重になる。
「トリガー起動!ちょっと!反応してよ!トリガー起動!!…もうッ!!」
「そりゃあトリガーに触れてないし、とりあえず今日は諦めろって」
「やだ!!!あんたまじわたしのこと売る気!!?」
「売るも何も、太刀川さんからは"本日ゆうを捕まえたチームには欲しいものを何でも1つだけもらえる権利が与えられる"って聞いたからラッキーって思ってお前のこと探してたんだけど」
「…はぁぁ!?ナニソレ!?完全に太刀川さんに騙されてる!わたしは今日も朝から太刀川さんにしつこく俺と付き合え、もしくは一回抱かせろって追い回されてるから逃げてたの!」
「うわぁまじか、それはすまん。通信で居場所伝えちゃったしそろそろ太刀川さん来ちゃう頃かな」
「え、でも今日午後から上に呼ばれてるって…?」
「その予定がちょっとズレて夕方からになったってさっき連絡があったんだよなー隊のミーティングも明日に変更にするってさ」
「余計詰んだ、終わったわたしの人生。あ〜下手したらわたし太刀川さんに陽の光が当たらない部屋で手足に鎖つけられて逃げられないように監禁とかされちゃうのかな〜」
「えっ…いやまじでごめん、俺がそうさせねぇから安心しろって。監禁されたら俺らもゆうと会えなくなんだろ?そんなん無理、毎日暇になんじゃん」
「安心しろって言ってくれるからちょっと期待したけどからかう相手いなくなって暇になるからかよ」
「それもまぁあるけど、それだけじゃねーって!いくら自分の隊の隊長でもお前を独り占めなんてさせねぇ」
真っ直ぐとゆうを見つめる出水にゆうは少し恥ずかしくなり頬を染めた。
ふいっと顔を横に向けて赤くなった頬を隠す。
「あー、柚宇さん?ちょっと事情変わったんで俺らの位置情報消してもらっていいっすか?」