chapter:思い焦がれて だが、先輩は、そうじゃなかった。 彼は、美術室の後ろと前、それぞれのドアを閉じ、中から鍵をかけただけだった。 ――え? 放心状態になる俺に――先輩は、ふたたび目の前にやって来て、俺の首に、細い腕を巻きつけた。 「これで誰にも邪魔されないね」 ……すごい殺し文句だ。 間近でにっこり微笑みながらそんなことを言われれば、もう何も考えられなくなる。 俺の半開きになった口に、先輩の唇が付いては離れ、離れては付いてと、何度も啄む。 その度にリップ音が生まれ、俺を欲望へと誘う。 ――もう無理だ。 自制が利かない。 俺は、交わすキスの合間に自分のブレザーを脱ぎ、そうして床に落とすと、先輩をそのまま、ゆっくりと倒していく――……。 朝の白い光が、教室に舞うホコリに乱反射して、それが先輩の透けるような白い肌を包む。 ただのホコリなのに、それさえも綺麗に見えてしまうのは、美しい先輩がここに居るからだろう。 先輩の、ふっくらとした唇を舌でなぞり、白い喉元へと這わせていく。 「とうどうくん……」 俺の名を呼ぶ先輩。 どうせなら、下の名前で呼んで欲しい。 「涼(りょう)って、呼んでください」 「……んっ、あっ」 先輩の耳に息を吹き込むようにしてボソリと告げると、華奢な身体が仰け反った。 耳朶を甘く噛んで、悩ましい声を聞く。 「ぁ、ぁ……りょう……涼っ!! 涼も呼んで!! 僕の名前っ!!」 先輩は華奢な身体をくねらせて、そうしてゆっくり、俺の名前を呼んでくれた。 |