chapter:Passion いつも静かなんだけど、今日はいつもより、ずっと静かな気がする。 聞こえるのは、オレの、ドクン、ドクン、と鳴る心音。 それと……。 「……アティファ」 オレを呼ぶ、ヘサームの声だけ……。 「あ……」 ベッドに押し倒されたオレの真正面には、すべてを見透かすような視線が注がれる。 いつもは冷静なヘサームは、だけど今は違う。 黒水晶のような、淀みない目は欲望を宿し、彼が男だということを、あらためて認識させられる。 ……トクン。 ヘサームの視線とオレの視線が重なれば、心臓が大きく跳ねた。 「……アティファ」 もう一度、ヘサームがオレの名前を呼ぶ。 「……んぅ」 間もなくして、薄い唇によってオレの口は塞がれた。 オレは深い口づけを受ける。 ヘサームによって、オレが着ていた衣服のすべてが脱がされていく。 性急な行動は、いつもの冷静なヘサームらしくない。 それでも、少しも怖いとは思わない。 だってさ、早くオレを抱きたいって思うくらい、オレのことを好きっていうことでしょう? それに、オレが知らないヘサームの一面を知ることができるんだ。 好きな人のことなら、どんな些細なことでも知りたい。 それが恋心っていうものだ。 らしくないヘサームを見ることができて嬉しい。 リップ音と一緒に、オレの口が解放された。 |