アラビアン・ナイト
第七話





chapter:Refusal~涙の理由





オレは鎖で繋がれていない方の左手で、差し出された果物をカゴごと払い除けた。


紫色をした絨毯(じゅうたん)に向かって勢いよく落下するカゴからこぼれ落ちた果物が、ゴロンと音を立てて転がった。



「貴様、へサーム様がせっかく!!」




兵士の手が上がる。

差し出した好意を受け取らないオレを叩く気だ。


「っつ!!」


殴られる!!



オレはやって来る激痛から堪えるため、歯を食いしばり、目を閉じる。


だけど、いつまで待っても痛みはやって来なかった。





「やめろ、行くぞ」


兵士を制止させたヘサームは、オレに背を向け、扉を閉めた。


それとほぼ同時――。

ガチャン。


冷たい金属音がオレの耳に届いた。


聞こえた金属音は、きっと鍵をかけたことによるものだろう。


オレが逃げられないよう、施錠したんだ。




そんなことをしなくても、オレは逃げない。


逃げる場所なんて、もうどこにもない。


同性に組み敷かれ、汚れてしまったオレ。



そのオレが、いまさらオレを生んでくれた母さんや、純真無垢な妹マスーメの前に出て行ってどうしろというんだ。




恥をさらすだけだ。


いや、それよりも、心優しい母さんのことだ。変わり果てたオレの汚い体を見て嘆くだろう。


『自分さえ健康であれば』とそう言って、自分を責めるかもしれない。





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