アラビアン・ナイト
第一話





chapter:Escape~逃亡の果て





背が高くてがっちりした体はカンドーラに身を包み、その上からは紺色のデザートローブを着ている。


肩からは、スカーフをかけていた。

腰にはやっぱりジャンビーアを差し、サンダルをはいている。


顔は――――。


悔しいくらい、オレとは真逆だ。

太陽に愛されているのか、健康的な肌をしている。

オレよりも少し細い黒の目は、宝石のように輝いている。


かなりの美形だ。



「あんた誰!?」


目の前にいる男を警戒したオレは、男の手を振り払い、腰に差してあるジャンビーアに手を伸ばした。


なにせ、目の前にいるのは知らない人間で、しかもこの男、それなりの金持ちだ。


デザートローブだぞ?

そんな立派なものを着られるのは、そういうお高い身分の人間しかいない。


そしてオレは、オレたちを尻に敷いて、苦しいことを何も知らない、のうのうと生きている金持ちが大嫌いだ。


オレは追われていることも忘れて大きな声を出した。




「シッ!」

だけど男は冷静だった。


いきり立つオレを宥(なだ)めるようにして、高い鼻梁の下にある、薄い唇に人差し指を当てた。


大人の余裕っていうの?


……オレ、そういうのも嫌い。

だからオレは、眉尻をより上に持ち上げた。


「くそっ、盗人めっ! いったい、どこに行きやがった!!」

そんなオレの背後からは、オレを探す兵士たちの野太い声が聞こえてくる。





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