chapter:Escape~逃亡の果て 背が高くてがっちりした体はカンドーラに身を包み、その上からは紺色のデザートローブを着ている。 肩からは、スカーフをかけていた。 腰にはやっぱりジャンビーアを差し、サンダルをはいている。 顔は――――。 悔しいくらい、オレとは真逆だ。 太陽に愛されているのか、健康的な肌をしている。 オレよりも少し細い黒の目は、宝石のように輝いている。 かなりの美形だ。 「あんた誰!?」 目の前にいる男を警戒したオレは、男の手を振り払い、腰に差してあるジャンビーアに手を伸ばした。 なにせ、目の前にいるのは知らない人間で、しかもこの男、それなりの金持ちだ。 デザートローブだぞ? そんな立派なものを着られるのは、そういうお高い身分の人間しかいない。 そしてオレは、オレたちを尻に敷いて、苦しいことを何も知らない、のうのうと生きている金持ちが大嫌いだ。 オレは追われていることも忘れて大きな声を出した。 「シッ!」 だけど男は冷静だった。 いきり立つオレを宥(なだ)めるようにして、高い鼻梁の下にある、薄い唇に人差し指を当てた。 大人の余裕っていうの? ……オレ、そういうのも嫌い。 だからオレは、眉尻をより上に持ち上げた。 「くそっ、盗人めっ! いったい、どこに行きやがった!!」 そんなオレの背後からは、オレを探す兵士たちの野太い声が聞こえてくる。 |