アラビアン・ナイト
第八話





chapter:Seek~傷負い人





――ヘサームにオレじゃない、好きな人がいる。

そう思っただけで、オレの胸は張り裂けそうだ。



そんなことを考え、頭を抱えているオレをよそに、ナジさんは、目にかかるやや長めの前髪を後ろになで上げた。


ナジさんの顔がやつれて見えるのは、ほかでもない。

ベッドの上に横たわり、苦しげに何度もオレの名を呼ぶヘサームのせいだ。



なんたって、ヘサームの熱は、さっきまで一向にひく気配がなかったから……。


あ、今は大丈夫。飲ませた薬がやっと効いてきたみたいだ。

腹に受けた傷の痛みも、熱がひくのと同時に緩和されつつあるらしく、薄い唇から吐き出される息が、少しずつだけど落ち着いてきている。



「――にしても、だ。

俺はもう、面倒は見切れんぞ。後にも先にも、コイツの面倒は君に任せるよ。何かあったら従者を寄越してくれ」


ナジさんはそう言うと、疲れ切った表情でヘサームを見下ろし、苦笑を浮かべていた。


対するオレはっていうと、顔が熱いから、きっと真っ赤になっていると自分でもわかる。


だって、ナジさんの言ったそれはまるで、義父が新妻に声をかけるみたいだったから……。




そんなオレの表情を覗き見たナジさんは、ややあって頷いた。


「なんだ……ちゃっかり両想いじゃないか。

こいつ、お前さんには嫌われてると思って傷ついてやがるから、誤解は早めに解いてやってくれ」





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