アラビアン・ナイト
第九話





chapter:Passion~アティファ





それを感じ取ったのか、ヘサームは火傷でもするかのように、オレの体から手を放した。


何の予兆もなく、ふいに解放されたオレの唇は、ほんの少し、寂しさをおぼえる。


ヘサーム?

いったいどうしたんだろう?


「……アティファ。流されているのか?」


オレの頭は、長いキスのおかげでボーッとする。

そんな状態の中、ヘサームが放った声が冷たく響いた。

火照りつつあった体に冷水をかけられるみたいに……。




「っ、んなっ!!」



カチン!


ヘサームのその一言がシャクにさわった。


だって、その言葉は、オレのこと、誰にでも体を開くヤツだと思ってるってことだろう?


媚薬なんて、ほとんど抜けきってる状態で、誰が簡単に体を開くかよっ!!



オレは、ヘサームだからキスを許したんだ。


他のヤツなら、ぶん殴ってるところだ!


「ヘサームなら、キスしてもいいって思った。これはオレの意志だ!」


――ああ、だけどヘサームは、もしかすると淫らなオレが気に入らないのかもしれない……。



ヘサームはきっと、出会ったばかりの頃のオレが好きで、他の男に体を開いたオレが嫌いなのかも……。





だったら……。

だったら、どうしてそう言わないんだろう。





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