アラビアン・ナイト
第九話





chapter:Passion~アティファ





「そんなにオレのことが嫌いなら、『守れない』ってまどろっこしい言い方なんかやめて、『誰にでも簡単に体を開いたオレが気持ち悪い』って、そう言えばいいじゃん!!」


気がつけば、怪我人に向かって怒鳴っていた。


だけど、今はヘサームが怪我人だと気遣うことができない。


心がズタズタに引き裂かれたオレの方が重病のように思える。




――馬鹿みたいだ。


オレばっかり舞い上がっちゃってさ……。


ヘサームはもう、この恋に冷めてしまったのに……。


オレはなんで、ヘサームと両想いだって――こうしている今でもオレのことを想ってくれていると、どうしてそう思ったんだろう。


状況は、もう変わっているっていうのに、バシラさんやナジさんの言葉を信じていたなんて!!


オレ、馬鹿じゃん……。


気がつけば、オレの目から涙が流れていた。


涙、止まらない。


それくらい、ヘサームのことが好きになっていたなんて、自分でもビックリだ……。






「アティファ……」

ヘサームが手を伸ばしてくる。


でもきっと、これはオレを気の毒に思っただけだ。




オレを想ってくれてもいない相手に優しくされたって、ちっとも嬉しくない。


オレは、差し出される手を払い除けた。


パシンッ!!

乾いた音が、冷たくなった心に響く……。





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