好きと言えない。
第五話





chapter:想い、溢れて伝う涙。





「悠里、何故こんなことをする?」

 昴はしゃがみ込み、悠里と同じ目線になると、そっと訊(たず)ねた。

 その言葉はとても優しくて、悠里のことを考えてくれているような錯覚に陥ってしまう。


 けれど、昴はそうではない。

 昴の心にあるのは、いつだって、今スキャンダルになっている女優のことだし、悠里はただ、当てつけで抱かれているだけなのだ。

 彼女とうまくいけば、昴は悠里を捨て、家庭を築く。

 その場所に、悠里はいない。

 だから、悠里は首を振り、昴にしがみついた。

 涙を流しながら……。



「悠里!!」

「ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 悠里は、昴に縋り、謝り続けた。

「悠……里?」


 悠里はいったい何を謝っているのだろう。

 理解できない昴は、涙を流し、首を振るたびに涙を散らす悠里を抱え上げると、ベッドへと移動させた。

 やがて、悠里の身体がベッドに沈む。


「なぜ謝るんだ? 怒らないから言ってみなさい?」


 そう言いながら、昴は足元にあった毛布を悠里のしなやかな身体に掛ける。

 その優しい仕草すら、今の悠里には堪えられなかった。


 昴に嫌われないように、抱かれようと思ったのに、それさえも拒絶された。


 自分は今、熱に犯されている。

 だから、昴はこうして優しい態度を取っているだけだ。


 昴はけっして悠里に執着なんて見せない。


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