好きと言えない。
第五話





chapter:想い、溢れて伝う涙。





 そう思うと、悠里の大きな目から溢れる涙は絶えず、頬を伝い、流れていく……。


(お願いだから、捨てないで!!)


 けっして口にはできないその言葉。

 悠里は胸の内で叫び、願った。


 そんな悠里の唇からは、嗚咽が放たれ続ける。


「悠里……」


 悠里の耳元で、昴のため息にも似た声が聞こえた。

 その声は、煩わしいと告げているようだ。


 悠里は、びくりと身体を震わせる。


 しかし、昴にとって厄介者にしかすぎない悠里は、『離さないで』とも言えない。


 だから悠里は、昴の口から拒絶の言葉を告げられることを覚悟し、赤い唇をぎゅっと噛みしめた。

 自分の目の前にある景色を遮断するため、瞳も閉じる。


 その瞬間だった。

「んっ…………」


 悠里の呼吸が、ほんの一瞬、止まってしまった。


 熱い何かが、悠里の唇を塞いでいた。

 悠里は突然口を塞いできたそれで、下腹部が燃えるように熱くなったのを感じた。

 これは熱のせいじゃない。


 これは――……。


 悠里は目を開けず、そのまま、身を委ねる。

 すると、ねっとりとした熱を帯びた何かが、唇の隙間から滑り込んできた。

 それを感じると、さらに身体は熱くなる。

「あっ……はっ」


 悠里の唇から放たれるのは、悲しみに染まった嗚咽ではなく、甘い吐息だ――。

 自分の唇を塞ぐこの感触は、けれど悠里はよく知っていた。


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