chapter:想い、溢れて伝う涙。 そう思うと、悠里の大きな目から溢れる涙は絶えず、頬を伝い、流れていく……。 (お願いだから、捨てないで!!) けっして口にはできないその言葉。 悠里は胸の内で叫び、願った。 そんな悠里の唇からは、嗚咽が放たれ続ける。 「悠里……」 悠里の耳元で、昴のため息にも似た声が聞こえた。 その声は、煩わしいと告げているようだ。 悠里は、びくりと身体を震わせる。 しかし、昴にとって厄介者にしかすぎない悠里は、『離さないで』とも言えない。 だから悠里は、昴の口から拒絶の言葉を告げられることを覚悟し、赤い唇をぎゅっと噛みしめた。 自分の目の前にある景色を遮断するため、瞳も閉じる。 その瞬間だった。 「んっ…………」 悠里の呼吸が、ほんの一瞬、止まってしまった。 熱い何かが、悠里の唇を塞いでいた。 悠里は突然口を塞いできたそれで、下腹部が燃えるように熱くなったのを感じた。 これは熱のせいじゃない。 これは――……。 悠里は目を開けず、そのまま、身を委ねる。 すると、ねっとりとした熱を帯びた何かが、唇の隙間から滑り込んできた。 それを感じると、さらに身体は熱くなる。 「あっ……はっ」 悠里の唇から放たれるのは、悲しみに染まった嗚咽ではなく、甘い吐息だ――。 自分の唇を塞ぐこの感触は、けれど悠里はよく知っていた。 |