好きと言えない。
第八話





chapter:拒絶。





 そうこう考えを巡らせていると、昴は淡々とした口調で告げてきた。


『ああ、すまない。今、友人と飲みに来てるんだ。帰りは遅くなるから、先におやすみ』



――それでもいいから、昴を待っている。


 悠里はそう言いたかった。

 だが、それは昴にとって、迷惑なこと、この上ない。


「うん、おやすみなさい」


 悠里は自分の気持ちを堪え、ぐっと喉に力を入れて、電話を切った。

(もっと、話したかったのに……)


 あれほどまでに深く抱かれたのに、簡単に電話を切られたことが悲しい。

 それは、悠里のことを何とも思っていないと告げられているも同然だった。


 今夜、昴は一緒に飲んでいるその女性と共に過ごすだろう。

 自分を抱いた時のように、その女性を……。



 そう思えば、胸がジクジクと痛みだず。

 悠里の役目は、もう終わったのかもしれない。


 昴はもう、自分の身体に飽きたのかもしれない。

 もう……彼には、自分は必要ないのだ。


「……っく……っひ……」


 引き結んだ小さな唇から、嗚咽がはじき出される。
 視界も歪みはじめた。




 両親が喧嘩ばかりしている時、自分を慰(なぐさ)めてくれた昴。


 母親が亡くなった孤独な悠里を、小言も言わずに引き取り、学費まで支払って、無償で高校にまで通わせてくれる昴。

 風邪をひいても、看病までしてくれた昴。


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