好きと言えない。
第九話





chapter:恋着。







 昴(すばる)は、携帯の待ち受け画面を見つめていた。

 ほのかな明かりに照らされたカウンターに肘をつき、度の強いブランデーが入ったグラスをぐいっと一気に飲み干す。喉に焼け付くアルコールを胃へと送り込んだ。

 それとは逆に、胃からは言いようのない憤りが込み上げてくる。

 悠里(ゆうり)に会いたい。

 その想いは、時間が過ぎるほどに増す。

 だが、悠里と会えば、必ず彼を抱きたくなる。

 そうなれば、悠里はまた風邪をこじらせ、危険な目に遭う。

 それだけは、何としてでも避けなければならない。

 しかし、悠里の声を聞くだけで、早く家に帰りたいとも思う。



「どうしたんだ? お前らしくないな」


 空になったグラスを無言で見つめていると、昴と同業者の樟葉(くずは)が隣に腰掛けてきた。

 昴はそんな彼を横目で一瞥(いちべつ)する。

 そして何事もなかったかのように、バーテンダーに次の酒を注文した。

「おいおい、せっかく浮かない顔をしたお前を誘ってやったのに、その態度はないだろう? 今日のお前、変だぞ? 何かあったのか?」

 樟葉は、無表情を決め込んでいる、クールな同業者に問うた。

「別に、どうたっていいだろう」


 余計なお世話だ。


 昴はバーテンダーから飴色をした液体が入ったグラスを受け取ると、そのまま、一拍も開けず、ぐいっと一気に飲み干した。


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