chapter:恋着。 昴(すばる)は、携帯の待ち受け画面を見つめていた。 ほのかな明かりに照らされたカウンターに肘をつき、度の強いブランデーが入ったグラスをぐいっと一気に飲み干す。喉に焼け付くアルコールを胃へと送り込んだ。 それとは逆に、胃からは言いようのない憤りが込み上げてくる。 悠里(ゆうり)に会いたい。 その想いは、時間が過ぎるほどに増す。 だが、悠里と会えば、必ず彼を抱きたくなる。 そうなれば、悠里はまた風邪をこじらせ、危険な目に遭う。 それだけは、何としてでも避けなければならない。 しかし、悠里の声を聞くだけで、早く家に帰りたいとも思う。 「どうしたんだ? お前らしくないな」 空になったグラスを無言で見つめていると、昴と同業者の樟葉(くずは)が隣に腰掛けてきた。 昴はそんな彼を横目で一瞥(いちべつ)する。 そして何事もなかったかのように、バーテンダーに次の酒を注文した。 「おいおい、せっかく浮かない顔をしたお前を誘ってやったのに、その態度はないだろう? 今日のお前、変だぞ? 何かあったのか?」 樟葉は、無表情を決め込んでいる、クールな同業者に問うた。 「別に、どうたっていいだろう」 余計なお世話だ。 昴はバーテンダーから飴色をした液体が入ったグラスを受け取ると、そのまま、一拍も開けず、ぐいっと一気に飲み干した。 |