好きと言えない。
第九話





chapter:恋着。





 度の強いアルコールが昴の喉を通り、胸を熱くさせる。

 あっという間に空になったグラスを掲げ、再びバーテンダーに酒の追加を注文する。

――すべては悠里を忘れるため。

 ただそれだけだ。

 だが、どうやったって悠里を忘れられることなどできない。

 あの、少女のような茶色の澄んだ大きい瞳で見つめられれば、昴の胸は大きく高鳴り、胸が締めつけられる。

 あの、小ぶりな苺の唇で昴の名を呼ばれれば、摘み取ってしまいたくなる。

 それに……悠里の身体はとても甘く、しなやかだ。

 昴が攻めたてれば泣きじゃくり、甘美な声で求めてくる。

 こうして今、悠里を想うだけでも昴自身は勃ち上がり、彼を求めてしまう。

 悠里を忘れることなど昴にとっては皆無に等しい。

 それだけ、昴は悠里を想っていた。

 しかしそれ故に、悠里という存在は、苛立つ原因になる。

 悠里を忘れたいどころか、離れようとすればするほど、悠里への執着は増す一方だ。


「おま……飲みすぎ……」

 樟葉は、昴の掲げたグラスを分捕った。

 邪魔をするなと睨(にら)めば、もう帰れと告げられる。

 自分から誘っておいて、早く帰れとは、なんと勝手な奴だろう。


「今日のお前、ほんとおかしいぞ? 家に帰りたくないって言ってるみたいだ。悠里くんと喧嘩でもしたのか?」


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