chapter:蜜に溺れる身体 「だってそうだろう? 人間は無知で愚かだ。常に自分ばかりが苦しいと考え、自分たち生き物とは違う他の者はすべて感情がないと思っている。俺は、そんな奴らを、支配する王になるんだ」 人間を……支配する……? オレを助けてくれた幸を……? 加奈子(かなこ)を……? 「ち、がう……人間は愚かじゃない!! そりゃ、神楽の父さんと母さんを殺した愚かな人間もいると思う。けど……そればかりじゃ……」 「へぇ、古都は人間の方を持つんだね」 説得しようと試みるオレの言葉を中断し、紡いだ神楽の言葉は恐ろしいほど冷えきっていた。 「そう言えば、古都は人間の世界に来てから、どこでどうしていたのかな? この足の傷だって、人間の世界で作られた薬が塗ってあるね。いったい、どうしたのかな?」 「っくっ……」 ……言えない。 人間に介抱してもらったとか、もし、そういうとこを言えば、人間に復讐心を持つ神楽はきっと、逆上してしまう。 ましてや、オレが人間に恋をしてるなんて言えば、幸は確実に殺されてしまうだろう。 オレは神楽に返事をしないで、口を閉ざした。 「まあいいさ……どうせ、人間は俺たち妖狐族の奴隷になってもらうんだから。それより、古都。続きをしようか」 神楽は唇をひん曲げて冷淡にそう言う。 傍らに置いていた桃色の小ビンからクリームを取り、オレの身体に塗りたくった。 |