chapter:大きな傷を抱えて。 新たに決意したオレは、差し出された手を引っ掻いた。 ザリッ! 「……っつ!!」 男の腕から赤い血が流れ、オレの爪の中に入ってくる。 苦痛にゆがめた表情を浮かべたそいつは、オレを見据える。 この男がもし、神楽の仲間なら、オレは確実に殺される。 いくら優しい顔をしたって、どうせみんな自分を傷つけられれば怒る。 それで、オレも父さんと母さんのように死んでいくんだ。 だけど、命乞いなんてしない。 オレは小さくっても妖狐族の王の息子。王子だ。 その名に恥じないよう最後を迎えるんだ。 今は妖力ないけど、それでも戦わなくっちゃいけない時ぐらいわかってる。 こんな無様な最後だけど、それでも父さんと母さんはよくやったって、天国へ逝った時、きっと褒めてくれるよね。 「フーーッ!!」 オレは腰を上げて口から牙を出す。 精一杯の抵抗を見せた。 「そんなに怯えないで。俺は何もしないから……」 敵意を目いっぱい見せるオレ。 それなのに、苦痛に顔を歪めたそいつは、眉をハの字にさせて悲しそうにオレを見てくる。 なんで? どうして? コイツ、神楽の手先だろ? 今は姿を見せないけど、きっとすぐに神楽が戻って来るんだろ? 無害なフリしてオレを安心させ、神楽に突き渡すんだろ? だったら……。 オレはもう一度唸り声を上げると、目の前のソイツに飛びかかった。 |