迷える小狐に愛の手を。
第一話





chapter:大きな傷を抱えて。





新たに決意したオレは、差し出された手を引っ掻いた。


ザリッ!

「……っつ!!」


男の腕から赤い血が流れ、オレの爪の中に入ってくる。

苦痛にゆがめた表情を浮かべたそいつは、オレを見据える。


この男がもし、神楽の仲間なら、オレは確実に殺される。

いくら優しい顔をしたって、どうせみんな自分を傷つけられれば怒る。

それで、オレも父さんと母さんのように死んでいくんだ。



だけど、命乞いなんてしない。

オレは小さくっても妖狐族の王の息子。王子だ。

その名に恥じないよう最後を迎えるんだ。



今は妖力ないけど、それでも戦わなくっちゃいけない時ぐらいわかってる。


こんな無様な最後だけど、それでも父さんと母さんはよくやったって、天国へ逝った時、きっと褒めてくれるよね。


「フーーッ!!」


オレは腰を上げて口から牙を出す。

精一杯の抵抗を見せた。




「そんなに怯えないで。俺は何もしないから……」


敵意を目いっぱい見せるオレ。


それなのに、苦痛に顔を歪めたそいつは、眉をハの字にさせて悲しそうにオレを見てくる。


なんで?

どうして?

コイツ、神楽の手先だろ?


今は姿を見せないけど、きっとすぐに神楽が戻って来るんだろ?

無害なフリしてオレを安心させ、神楽に突き渡すんだろ?


だったら……。

オレはもう一度唸り声を上げると、目の前のソイツに飛びかかった。





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