chapter:大きな傷を抱えて。 「んっく……」 ガブッ。 男の太い腕に噛みつき、爪を立てた両手を皮膚に食い込ませる。 ソイツが苦痛の声を出した。 あまりに苦しそうな声だったから、つい攻撃する力をゆるめてしまいそうになる。 だけど、やっぱりそんな馬鹿なマネはできない。 そんなことをしたら最後、オレは抗う力を失ってしまうから。 ポタリ。 ポタリ。 オレが突き立てた牙と爪が傷をつくり、ソイツの腕から真っ赤な血が流れはじめた。 いくら今のオレは小動物だからとはいえ、ここまでの傷になると痛みは尋常(じんじょう)じゃないだろう。 チラリと視線を流せば、空いているソイツの手がオレに向かって来た。 殴られるっ!! 攻撃に備えてソイツの腕から身体を離し、地面に降りる。 ――直後、激痛が後ろ足を襲った。 おかげでオレの身体は地面に叩きつけられるようにして着地してしまった。 激痛を訴えるオレの身体は、地べたに這いつくばってしまう。 ……だめだ、動けない。 父さん。 母さん。 くそっ。 何ひとつできない自分に嫌気がさす。 止まった涙が、また溢れてくる。 視界が歪みはじめる中、オレに力いっぱい手傷を負わされたソイツは、目の前にやって来た。 殺される!! オレは覚悟を決めて目を閉じた。 だけど……。 あれ? 痛みはやって来ない。 それどころか、オレの身体……。 |