chapter:お日さまを失った日。 幸の意志が、妖力の意志を超えたの? 幸の意識は、妖狐の本能に勝ったの? 「幸…………」 幸が戻ってきてくれたことが嬉しくて、失いそうになっていたオレの意識は一気に覚醒した。 冷たい地面から起き上がる。 だけど、いまだに人間の幸が戻ってきてくれたのか信じられない。 恐る恐る、幸の背中を撫でる。 眠っているハズなのに、ピクピクと反応する大きな耳。 それがとても愛おしい。 「幸…………」 幸……。 ぽたり。 ぽたり、と落ちる涙は、悲しみじゃなくて、嬉しいから。 涙はオレのほっぺたを伝って、倒れている幸の頭に落ちていく……。 「古都!! どうした? 大丈夫か?」 オレが泣いていると、こっちにやってくる複数の足音が聞こえた。 「古都、古都、どうした!?」 鉄の扉を叩く音が聞こえる。 兄ちゃんたちだ。 兄ちゃんたちは、幸の、妖力の異変に気がついて、駆けつけてくれたんだ。 ……この想いが報われなくったっていい。 届かなくったっていい。 「幸……好きだよ」 目を閉じて意識を失ってしまった大きな妖狐に、そっと告げた。 見上げれば、高い窓からオレと幸を見守ってくれているように、優しい光りを放つ満月が闇の空から覗かせている。 よかった。 |