迷える小狐に愛の手を。
第十九話





chapter:お日さまを失った日。





その幸はもういない。


優しい微笑みも、もう見られない。

オレが幸という人格を殺してしまったから……。



「ゆ……き…………」


やがて罪悪感という暗闇がオレを包み、感覚を奪う。



そんな時だった。

『古……都……』


オレを呼ぶ、幸の声が聞こえたような気がしたんだ。

閉じた目をそっと開ければ、同時に肩口にあった牙は引っ込んでいく。

――えっ!?

戸惑いを隠せないオレの前に、幸の……金色の瞳をした妖狐の顔があった。

その眼はもう、オレを睨んではいない。

目をすぼめ、オレを見つめている。

まるで……微笑んでいるような――オレが大好きな幸の笑顔。


「ゆ……き…………?」


『古都……』


オレが幸を呼ぶと、幸も、もう一度、オレを呼んだ。

その瞬間……。


バタンッ。

幸の大きな身体が揺れて、オレの身体の上に倒れ込んだ。


「えっ? ゆき?」

いったいどうしたんだろう。

急いで幸の口に耳を欹(そばだ)てれば、穏やかな寝息が聞こえてきた。



う……そ…………。


オレは、現状に驚きを隠せない。

だって、だって幸の意識は妖力に食われた……ハズだ。

同じ力はふたつもいらない。だから幸にとって、オレを殺すことこそが真の解放。

だから、こんなことは有り得ない。


だけど……。

でも…………。


幸は、幸は……オレを殺さなかった?





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