chapter:お日さまを失った日。 その幸はもういない。 優しい微笑みも、もう見られない。 オレが幸という人格を殺してしまったから……。 「ゆ……き…………」 やがて罪悪感という暗闇がオレを包み、感覚を奪う。 そんな時だった。 『古……都……』 オレを呼ぶ、幸の声が聞こえたような気がしたんだ。 閉じた目をそっと開ければ、同時に肩口にあった牙は引っ込んでいく。 ――えっ!? 戸惑いを隠せないオレの前に、幸の……金色の瞳をした妖狐の顔があった。 その眼はもう、オレを睨んではいない。 目をすぼめ、オレを見つめている。 まるで……微笑んでいるような――オレが大好きな幸の笑顔。 「ゆ……き…………?」 『古都……』 オレが幸を呼ぶと、幸も、もう一度、オレを呼んだ。 その瞬間……。 バタンッ。 幸の大きな身体が揺れて、オレの身体の上に倒れ込んだ。 「えっ? ゆき?」 いったいどうしたんだろう。 急いで幸の口に耳を欹(そばだ)てれば、穏やかな寝息が聞こえてきた。 う……そ…………。 オレは、現状に驚きを隠せない。 だって、だって幸の意識は妖力に食われた……ハズだ。 同じ力はふたつもいらない。だから幸にとって、オレを殺すことこそが真の解放。 だから、こんなことは有り得ない。 だけど……。 でも…………。 幸は、幸は……オレを殺さなかった? |