chapter:プロローグ もし、今のオレが怪我もしていない状態だったら、怒鳴っていたところだ。 だけど今は、激痛の所為(せい)で視界が霞み、気を失いそうになる。 でも、気を失っている暇はない。 眠っちゃダメだ!! 眠れば最後、すべてがコイツに奪われてしまうんだから。 ……違う。 もう大半はコイツに奪われてしまった。 両親という大切な存在を……。 だけどこれ以上、コイツにオレの何かを奪われるなんて許さない。 「さあ、邪魔者はいなくなった。素直にお前を寄越(よこ)せ」 神楽はオレに跨(またが)り、空から降り積もる白と同じ色の衣へと手を伸ばす。 胸元に、手を忍ばせた。 おかげでオレの身体を包んでいた衣は簡単に肌蹴(はだけ)てしまう。 「ああ、やはりお前は美しい。この透き通る肌はまさに、王として生まれるべく俺に与えられたものだ」 神楽は感嘆の声を上げると、オレの首筋に唇をくっつけた。 イヤだ。 気持ち悪い。 こんなヤツに……父さんと母さんを殺めた奴に奪われてしまうなんて!! オレは傷ついた足にかまわず、腕を動かして神楽の頭を引っぺがそうと力を入れた。 ズキン。 「うぁっ!!」 そうすれば、両足が鋭い痛みを訴えてくる。 オレの精一杯の抵抗は、だけど神楽には効果がない。 「ダメだって言ってるだろう?」 |