迷える小狐に愛の手を。
プロローグ





chapter:プロローグ





もし、今のオレが怪我もしていない状態だったら、怒鳴っていたところだ。


だけど今は、激痛の所為(せい)で視界が霞み、気を失いそうになる。

でも、気を失っている暇はない。


眠っちゃダメだ!!


眠れば最後、すべてがコイツに奪われてしまうんだから。



……違う。


もう大半はコイツに奪われてしまった。


両親という大切な存在を……。



だけどこれ以上、コイツにオレの何かを奪われるなんて許さない。



「さあ、邪魔者はいなくなった。素直にお前を寄越(よこ)せ」

神楽はオレに跨(またが)り、空から降り積もる白と同じ色の衣へと手を伸ばす。


胸元に、手を忍ばせた。

おかげでオレの身体を包んでいた衣は簡単に肌蹴(はだけ)てしまう。


「ああ、やはりお前は美しい。この透き通る肌はまさに、王として生まれるべく俺に与えられたものだ」

神楽は感嘆の声を上げると、オレの首筋に唇をくっつけた。


イヤだ。

気持ち悪い。

こんなヤツに……父さんと母さんを殺めた奴に奪われてしまうなんて!!


オレは傷ついた足にかまわず、腕を動かして神楽の頭を引っぺがそうと力を入れた。


ズキン。

「うぁっ!!」


そうすれば、両足が鋭い痛みを訴えてくる。


オレの精一杯の抵抗は、だけど神楽には効果がない。



「ダメだって言ってるだろう?」





- 2 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom