chapter:*発火*―hakka― 「ねぇ、知ってる? 転校してきた彼のはなし」 「知ってる知ってる。なんでも前いた学校で暴力沙汰になって停学くらったって。それで居づらくなってこっちに来たって噂じゃない?」 「え? 髪も染めてないしそんなふうには見えないけど?」 「そういうのが一番危ないんじゃない?」 「うわっ、もうすぐ受験シーズン突入だし、内申書にひっかかるのマジ勘弁。俺、かかわらないようにしようっと」 机に突っ伏した俺の周囲でボソボソ好き勝手に話している奴ら。 だけど俺は知っている。 そんな奴らにかぎって、俺と目が合うと怯えて何も言えない臆病者だということは――……。 前の学校で、暴力沙汰になったのは本当の話。 だから今さら、弁解するつもりはない。 ただ、内容は真実とは異なっているのではあるが……。 あるひとりの教師が、引っ込み思案な生徒ひとりを標的にして恐喝まがいなことをしていたんだ。 俺はただ、それにぶちキレて殴っただけ……。 俺が全面的に悪いのではないが、いかんせん、俺は向こうの学校で授業はサボるわ勝手に帰るわの適当人間。 だから当然といえば当然、学校側は俺の話なんか聞こうともしなかった。 恐喝されていた生徒は、先生からの仕返しを恐れて真実を捻じ曲げ、理由もなく俺が暴力を振るったっていうことにしやがるし……。 |