chapter:*発火*―hakka― こいつ、前のガッコであった俺の噂、聞いてないわけ? 普通なら、受験シーズンのこの時期にトラブルメーカーになり得る存在は避けるはずだ。 それなのに……。 なんなんだよ。 付きまとうなよ、鬱陶(うっとう)しい。 人なんて所詮、裏切るだけ。 自分が一番可愛いんだ。 そうだろう? そうやって人と関わることにうんざりしていた俺は炎から逃げるように無視し続けていた。 だが、我慢の限界はやって来る。 いつまでも付きまとわれるの、正直、精神的に追い詰められる。 「なんで俺の周りをうろつくの? そういうの、迷惑なんだけど」 帰り道、同じ方向だからといつものように俺の後を着いてくる炎に振り返りもせず、ツンケンした態度のままそう言うと……。 「……ひと、め、惚れ、した、か……ら」 いつだって自信満々で、大声で、ハッキリとした口調の炎。 それなのに、彼は小さな声でぼそりとつぶやいた。 当然、俺は炎が何を言ったのかわからず、振り返る。 すると、腕で口元を隠している彼の姿があった。 炎の顔は耳まで真っ赤だ。 夕焼けよりも赤い。 身長は、炎の方が高いはずなのに、なぜだろう。 今は炎がものすごく小さく見えた。 ……可愛い。 ふと、そんなことを思ってしまう俺はどうかしているのかもしれない。 炎のそんな顔を見るのは初めてで、つい動揺してしまった。 |