chapter:ぷろろーぐ。 電車は嫌い。 ガタゴト揺れるし、 うるさいし、 特に、朝は通勤ラッシュで混み合っていて、車内はぎゅうぎゅう詰め。 とても疲れる。 だから午前八時の今も、電車の中は鮨詰(すしづ)め状態だ。 ただでさえ、ものすごくきついのに、なんたってぼくの身長は百六十センチと、高校二年生にしてはかなり低い。 だからぼくはいつものように、人に押し潰されそうになるわけで……。 うああ。 息苦しい。 だけど、電車が嫌いな理由はそれだけじゃない。 それは……。 ……ああ、まただ。 ぼくは唇を噛みしめ、漏れそうになる声を押し殺す。 不快感がぼくを襲う。 そんなぼくのお尻には、誰かの手が乗っていて、まるで形状をたしかめるかのようにして、スルスルと撫でられる。 『また』っていうのは――そう。 これは今に始まったことじゃない。 こうやって、いつも電車の中で痴漢にあってるから――。 それがおかしいんだ。 違う時刻の電車に乗っても、やっぱりこうやってお尻を触られるの。 これって、これって、ぼく、かなり危険なのかな……。 ぼく、同じ人に付けられてるの? それとも、違う人? ぼくを襲う人がたくさんいるっていうこと? 怖くて顔も見たことがないから、なんとも言えない。 だけど今日の触られ方、いつもよりおかしいよ。 |