chapter:鈴がおかしい。side:有栖川 霧我 「やあ、遅かったね霧我」 先生の用事でいつものことながら生徒会室に遅れた俺を、にこやかな表情で出迎えてくれたのは副会長の紅葉だ。 だが、なぜだ。 紅葉の表情がおもいきり輝いて見えるのは……。 で、鈴は……なぜ、机の下でうずくまっているんだ? 防災訓練でもしているつもりか? いや、可愛いからいいんだが……。 「鈴?」 机をズラして覗き込む。 「ひにゃっ!!」 ガコンッ!! 「いっ!!」 俺の声に驚いたのか、丸めた肩が伸びて、当然のことながら机の下でうずくまっていたから、頭を硬い机にぶつけた。 恐ろしい音が聞こえたぞ。 「鈴? 大丈夫か? さっきの音からして、ものすごく痛かったんじゃないか?」 「だいじょぶ……」 そう言っても、まだ机の下でうずくまっている鈴。 あまりの痛みに身動きが取れなくなったとか? そう思うと、鈴をなんとかしてあげたくて、肩を引っ張って机の下から身体を出してあげた。 「ひゃっ!!」 「鈴、痛いんだろう? 保健室に行こう!!」 ここへ来て、はじめて顔を見ると、鈴の顔が恐ろしく真っ赤だった。 それに……大きな目に涙があふれている。 これはさっき頭をぶつけたからだろうか。 顔が真っ赤なのは風邪か? 「……だい、じょぶ」 鈴はそう言って顔をうつむける。 |