chapter:胸ぐら掴まれて。Side:有栖川 霧我 『も一回えっちしよう!!』 胸ぐらを掴んでそう言ったのは、昨日の放課後、俺が保健室で抱いた相手。 雨宮 鈴(あまみや すず)だ。 大きな目に決意を宿し、彼は今、眉をつり上げている。 いったい、どうしたんだろう。 ほんの数分前。 おそらく、昨日俺が鈴を抱いたことで身体に無理がいったんだろう。 俺がこの室内から出る前までは、動かしにくそうな身体をひょこひょこさせて登校してきた。 それが今、彼は大股で俺のそばまでやって来ると、恐ろしい剣幕で俺を見上げている。 そんな俺は保健室に行っていた理由はもちろん鈴にある。 責任を感じて痛み止めと蕾に塗るための軟膏をもらってきた。 その俺を睨(にら)み上げている。 「霧我(むが)!!」 ガタンッ。 胸ぐらを掴んで詰め寄る鈴をどう対処したらいいのかさえもわからない俺は、その場にいる紅葉へと助けを求めた。 おそらく、この行動を引き起こしたのは紅葉にまちがいはないだろう。 だが……。 紅葉はもう、室内にはいない。 おい!! どうするんだよ!! などと毒づいたところでどうにもできない。 「鈴、いったいどうしたんだ?」 鈴の身体に無理をいかせたのに、『どうした』とはえらく他人事だと、自分にツッコミを入れてしまう。 |