ねぇ、ギュッてしてよ。
やくそく。Side:雨宮 鈴





chapter:やくそく。Side:雨宮 鈴







「ばかばかばか、霧我(むが)のバカっ!!」

霧我なんて……。


霧我なんて……。



「電柱に頭ぶつけて無傷でいたらいいんだっ、うわ〜んっ!!」



今は放課後。

――オレンジ色の夕日が生徒の姿がほとんど無くなった閑散とした廊下を照らしている。


吹奏楽部が奏でているトランペットの音をどこか遠くで聞きながら、大声で怒鳴ったぼくは、背後で立ち尽くしている人物から5階の生徒会室に向かって走った。


背後にいる人物っていうのは、恋人の霧我だ。



「うわ〜ん」

ガラガラ、ピシャン!!



大粒の涙を隠さずに階段を上りきって生徒会室のドアを開けて力いっぱい閉めた。




「うわ〜ん」


ドアの前で膝を抱えてうずくまる。


「今度はいったい何が原因なんだ?」

そう言って面倒くさそうにため息をつくのは生徒会副会長の紅葉(もみじ)だ。


紅葉は、ぼくが誰のせいでこうなっているのかをもちろん知っている。


ぼくは、シャクリをあげながら、鼻水やらよだれやらあらゆる水でジュクジュクの泣きべそをかいている顔を上げた。


視界は涙でぼやけていて、何にも見えないけど、間近に紅葉が眉を寄せて呆れ顔になっているのは長年の付き合いでわかった。



「だって……だってね」

紅葉の、無言でぼくを責めるような視線に反抗するため、泣きべそをかきながらお腹から声を出した。





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