れんやのたんぺんしゅ〜★
不釣合い





chapter:君想う※r18




side:双羽



「っん、ふっ……」

 これは本当に私の声だろうか。今までに出したことのない甘い嬌声が、幾度となく繰り返される口づけの合間に放たれる。


 目の前には、襟足までの艶やかな黒髪と同じくらいの、まるで黒曜石のような瞳。綺麗な年下の――天伍(てんご)くんがいる。

 鋭い双眸は私を射貫き、離さない。


「ん、ぅうう……」

 開いた唇の隙間から侵入してくる彼の舌に翻弄され、ただ喘ぐばかりだ。

 私の両手は、彼の広い背中にちゃっかり回っている。

 レバーを引いて背もたれが倒される。

 下着から侵入してきた彼の手が私の素肌をなぞり、乳首を弄る。

 男にとって、そこは本来ただの飾りのようなもの。

 それなのに、触れられるとじっとりと熱を持ちはじめているのがわかった。

 私の雄がズボンを押し上げはじめる。

「胸、感じやすい? 膨れてる」

 私の雄が強調しはじめるていると天伍くんに気づかれた。

 彼は口の端を上げ、にっこり微笑むと、私の乳首を弄っていた手を、押し上げはじめている雄へズボンの生地の上から包み込んだ。


「てんごくっ!」

「恥ずかしい? 顔、赤くなって可愛い」

 天伍くんの手が生地の上から雄をなぞり、弧を描いた。

「何も考えられないくらい、気持ち良くしてあげる……」


 ジリジリとジッパーを下ろす音がする。

 恥ずかしすぎてその様子を見ることができず、視線は宙をさまよう。

 生あたたかな感触が直に私の雄に触れ……そうかと思えば、滑った何かが包み込んだ。

 驚き、見下ろせば、そこには天伍くんが私の雄を含んでいる姿が見えた。

「あっ、そこっ、ああっ!!」

 あまりの衝撃に、私の意識が一瞬飛んでしまう。

 同時に、下肢の方で何かを飲む音が聞こえた。

「もう達したんですか? 早いですね」


 クスクスと笑うその声で、はじけ飛んだ意識がふたたび呼び戻される。

 天伍くんの唇はじっとりと濡れているのが見えた。

 それはまぎれもなく、私の精液。

 吐精したそれを、天伍くんは飲んだんだ。


「うそっ!! てんごく、あああっ!!」

 信じられない気持ちを口にしようとしたら、また私の雄が天伍くんの薄い唇の餌食になった。

 胸にある両方の乳首さえも彼の指で弄ばれる。


「っひ、あっ、あっ!!」

 私の目の奥で、ちりちりと火花が散る。

 また達しそうになる。

 けれども二度目の吐精はやって来なかった。

 彼の口から私の雄が解放され、代わりに乳首を弄っていた手がふたたび消える。

 私の雄の亀頭にある先走りをそろりと塗り取ると、ズボンを下ろされた。

 私の下肢が解放される。


「……綺麗ですね」


 こんな研究オタクでも彼に綺麗だと言われるのなら、それは極上の悦びだ。


 彼がこれから私をどうしようか知っている。だから両足を開き、受け入れる準備をする。


 ほんの数時間前には考えられなかった行為。

 だが一度、彼への恋心を受け入れてしまえば、簡単に行動できる。


「双羽さん、好きです」

「わたし、も……」


 消え入りそうな声になったのは、男の色香を含んだ掠れた声を聞いたのと、私の吐精した精液をまとった指が、一本、双丘の間をくぐり抜け、密口に侵入してきたからだ。


 そこは本来排泄する場所で、けっして受け入れるところではない。指を挿(い)れられ、引き裂かれそうな痛みはあるものの、それでも愛おしいと思う気持ちは消えない。

 悲鳴を上げそうになる自分をなんとか抑え、唇を噛みしめる。


「ここ、かな?」

 いくらか我慢していると、天伍くんの声が聞こえた。

 私の中にある一点を、骨張った指が擦り上げた。

「っひ、あああああっ!」


 痛みが消え、言いようのない衝撃が私の全身をかけめぐる。

 椅子からベッドへと姿を変え、そこに寝そべっている私の体が大きく跳ねた。

「ここだね」

 何か頷いた天伍くんは、嬉しそうに微笑むと、指を二本に増やし、執拗にそこばかりを擦る。

「っひ、あっ、あうううっ、あああんっ!!」


 もうどうにもできない強烈な快楽。

 おかげで腰は浮き沈みを繰り返し、雄からは先走りが勢いよく噴射する。


 だけど足りない。

 もっと太いもので擦ってほしい。


「天伍くんっ!」

 襲い来る強烈な快楽で何も言えず、彼の名だけを呼ぶと、指が消え、代わりに熱をもった熱い楔が密口に当てられた。


 私が欲しいと思ったものを彼が汲み取り、与えてくれるんだ。

 私はいっそう大きく開脚すると、彼のたくましい腰に巻き付ける。

 熱い楔が私の内壁を掻き分け、先ほど指で擦られた部分に亀頭が触れる。


「あっ、っひうううっ!!」


 亀頭に何度も擦られ、私の意識が途切れそうになる。


 聞こえるのは天伍くんの乱れる息遣い。そして何度も打ち付けられる肌の音。

 私の嬌声ばかりだ。



「っひぅぅううう!!」


 最奥を攻められ、中にある楔にある欲望が弾ける。

 私の体内を、彼の精液が潤す。

 言い知れない幸福感が私を満たし、同時に二度目の吐精を果たした。







「これで冷やしておいてください」


 情事の後、私の体を綺麗にし終えた彼は、冷凍庫の中から氷嚢(ひょうのう)を取り出し、パニックを起こして打ち付けた額に当てるよう指示される。


 額の痛みはない。

 あるのは、彼に抱かれて恥ずかしい気持ちと、恋心を知った彼への熱だけだ。

 けれどもせっかくの好意を無下にすることもできず、項垂れながら、氷嚢を受け取り、額に当てる。


「はい……すみません」

 年下の彼が自分よりも冷静で情けない。

 しかも動くことができないなんて……。

 けれど彼に求められ、果てた私は肉体的に動けないのは仕方のないことだ。

 心の中で頷いていると、唇に柔らかな感触を受けた。

 反射的に口を開けば、瑞々しいものが口を占領する。


「食べて。喘ぎすぎて喉渇いたでしょう?」

 言われて口を動かせば、甘い果汁が口内に広がる。

 スイカだ。



「これからは暴走しないで、きちんと俺に相談してくださいね」

「っつ!!」

 にっこり微笑む君のその姿がとても綺麗で見惚れてしまう。


 心臓が大きく跳ねた。


 これから、大変なのかもしれない。


 ――ああ、目眩がする。

 それに頭もクラクラするし、心臓が跳ねすぎて不整脈を起こしている。

 自分の体はきちんと保てるだろうか。


 私は何も言えず、ただ大きく頷くばかりだった。



 **END**


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