chapter:プロローグ ガシャーン!! パリン!! 深夜ちょうど。 それは今日もはじまった。 あたしは布団にくるまって、この時間が過ぎるのを必死に堪(た)えるの。 いつもの時間。 聞こえるのは、ふたりが怒鳴り合う声。 そして物が割れる音。 「貴方はいいわよ! 仕事から帰ってきたらゆっくりするだけでしょう? 私は違うのよ? 仕事だって、家事だってしなくちゃならない!」 「だったら仕事を辞めればいいだろう? 慰謝料は払う」 「冗談じゃないわ! 慰謝料とかの問題じゃないの! 私にとって仕事は大切なものなの!」 「だったら、どうしろと言うんだ!」 「貴方が咲(さく)を引き取って!」 「冗談じゃない! わたしにだって仕事がある。それに、女同士の方が何かとわかるだろう」 (やめて) 「女とか男とかって何よ!! 貴方はそうやって、いつも私に責任を押しつける!」 (やめてよ。もう、やめて) 「なんだと?」 「結局、そうやって、貴方は逃げるのよ!!」 「それはお前だって同じだろうが!!」 パンッ!! 言い合いが続くその中で、頬を叩く乾いた音が響く。 反射的に、あたしは唇を噛みしめた。 たったひとりきりの暗い部屋で、布団を引っ被り、あたしはそうやって、いつも、夜が過ぎるのを堪えている。 (だれか、助けて……。あたしを、ここから連れ出して) ひたすら、そう願って……。 |