メルヘンに恋して。
prologue





chapter:我が儘王子




 ◇



 グラシオス・ラティオン。

 そこは天空の女神デュオーネに包まれた、真っ青なサファイアの空が広がり、水の女神クリティアの恩恵を与えられた、光り輝く透明な水。そして、大地の女神レアーに育まれたエメラルドの緑たちが豊かな、女神たちに愛された王国です。争いごとが無く、穏やかな国で、民たちは皆、仲睦まじく暮らしています。

 その王国を束ねるのは、心優しきロード王です。彼には息子の、アドレー王子がおりました。

 王子は、生まれながらにして美の女神アフロディーテに愛された子で、長身の、すらりとした出で立ちに鋼のような美しい肉体を持ち、麦畑を思わせるような艶やかな金の髪に、象牙色の、健康的な滑らかな肌をした、完璧で美しい容姿をしておりました。

 ですから皆は、アドレー王子を一目見た瞬間から、気に入り、甘やかします。

 皆に愛され、すくすくと育った王子は、やることなすこと、すべてを許され、やがて年頃になると、誰も手が付けられないほどの我が儘に育ってしまいました。

 王子の、度が過ぎた我が儘を見かねた国王は、皆の意見もあって、王子の我が儘が直るまで、この国の出入りを禁じ、さらには魔法で、王子をペンギンの縫いぐるみに変え、異世界に追放してしまいました。

 哀れ、縫いぐるみに変えられた王子は、自慢の美しい容姿を披露することができず、しかも、異世界に飛ばされてしまい、途方に暮れます。

 そんな中、王子は、ひとりの青年と出会います。

 青年は縫いぐるみの姿をした王子をたいそう気に入り、連れて帰りました。



 これは、縫いぐるみの姿に変えられた王子と、一人の人間の物語です。


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