chapter:裏で糸引くのは……。 今やラブラブカップル成立を果たした初々しい二人の青年を遙か上空から見つめる人影があった。 彼女は『doll』の店の主人だ。 老婆は長い杖を持ち、窪んだ目を細める。 老婆がしばらく遙か地上の二人を見つめていると、姿がぶれはじめた。 真っ白な髪が輝きはじめ、低い背をした身体がゆっくりと伸びていく……。 するとそこに現れたのは、灰色の薄絹を身にまとい、白髪の髪を団子結びにしている見窄らしい老婆ではなく、陶器のような透き通る肌に、カリブ海の色彩をした腰まである長い髪をした、この世の者とは思えないほどの美しい容姿をした女性だった。 彼女こそ、グラシオス・ラティオン王と結託し、アドレーを真っ当な王子へと更正させようとしていた美と官能の女神、アフロディーテだ。 「やれやれ、世話のやける王子だ。あれほど自分本意に動くなと言い聞かせていたのに、まだ懲りないとは……。まあ、当分はあの姿のままだろうな。しかしまあ、あの人間にとってはその方が良いと見える。……精進せよ、王の子よ」 アフロディーテは静かにそう言うと、遙か彼方へと飛び去っていった。 おしまい。 |