(四) あれから菊生(きくお)は付喪神(つくもがみ)にたっぷり精を注がれ、淫らに喘いだ。 おかげで喉はひりつくし、声は掠(かす)れている。 「もういいよ、こんなに食べられないから」 菊生は今、付喪神があぐらを掻いた膝の上に座らされ、お粥を食べさせられている。 どうやら彼は根っからの世話好きのようだ。 菊生がどんなに自分で食べると言い張っても、レンゲを渡してくれようとしない。 「そうは言うが、ここへ来てからろくに食べてないだろう」 綺麗な顔が台無しだ。彼の眉間に皺が寄っている。 「でも俺、小さい頃から小食だったから……」 「だからだろう? 年頃よりもずっと背が低いのは!!」 言い訳として使ったものは、しかし付喪神にとっては菊生にご飯を食べさせる良い材料になるばかりだった。 背が低いことを言われると、男として傷つく。 しかし、道理は合っているから言い返すことができない。 そこで菊生は話を逸らすことにした。 「ねぇ、ここでは貴方の名前は『付喪神』だって言ったよね? 他にどういう名前があるの?」 彼の名前が付喪神などと、そんな愛称で呼ぶのは何か気にくわない。 他の名があるのなら是非ともその名前で呼びたいと思ったからだ。 「縁(えにし)」 話を逸らされ、無愛想に言う彼は本当に神だろうか。 自分と同じ人間ではないのかと疑ってしまう。 だが、その名前は菊生は気に入った。 付喪神なんかよりもずっと素敵だ。 「縁……俺、そっちの呼び方で呼んでも良い?」 「構わない」 菊生が尋ねると、彼は頷いた。 「……縁」 そっと唇に乗せて呼べば、顎を掬われる。 「っふ……」 縁の薄い唇が落ちてくる。 「お前が逃げるまで、たっぷり可愛がってやろう」 「逃げない」 挑戦的な目で縁を見ると、彼の薄い唇が弧を描いた。 「ならば、私の子を宿してみるか?」 「……そうしたら、ずっと一緒だね」 菊生の身体が傾く。 縁の腕に閉じ込められた。 「可愛いことを言うな。もっと欲してしまうだろう」 菊生の懐に骨張った手が忍び込む。 ツンと尖った乳首に触れた。 「っん……」 痺れるような疼きが、触れられた乳首から全身へと駆け抜ける。 菊生の腰が跳ねた。 「じゃあ、もっと愛して……」 菊生は美しい銀の髪に指を差し込み、接吻の続きを強請った。 ―完―