お願い、ギュッてして!
★第二話★





chapter:★猿だって木から落ちるんだよ★





だけど、ぼくは知っている。


彼の洞察力がずば抜けていて、さらには思いのほか口が軽いという事実を――。


その部分がすべて校長先生の好みにヒットしたんだと思う。

見事副会長の座を我が物にした。


だから紅葉の言葉にはいつも注意しなければならないんだ。


だって、ほら。

今も何かよからぬことを言おうとしている。


その証拠に、ぼくを見る目つきが獲物を見るように光っているんだ。


いったい何を言うつもりなのだろう。


耳を澄ませば……。



「2人で室内にやって来るなんて、相変わらず仲がいいね」


紅葉は霧我とぼくを交互に見ている。

まさか……紅葉の言おうとしていることってっ!!


嫌な予感がぼくを襲う。


そんなぼくをよそに、紅葉は気にすることなく――。


「鈴、この分だと君の想いはすぐにでも霧我にと……」



うわわわわっ!!

ぼくは、慌てて紅葉の口を塞いだ。


「むぐっ」

「俺と鈴が何だって?」

霧我は、口を塞いでいるぼくと塞がれている紅葉に怪訝(けげん)そうな顔をして、尋ねてくる。

なんだかとっても不機嫌そうだよ。


だけど、今はそんなことにかまっている暇なんてない。


「それはだね、霧我くん」


紅葉を戒めるぼくの手が少し緩まったせいで、彼から言葉が発せられる。

うわわわわわわ!!

「むぐっ」

もう一度、ぼくは慌てて紅葉の口を塞いだ。


「なんでもないんだよ!! あ、あははははは!!」


もう!!

もうもうもう!!

紅葉、いい加減にしてよ!!


ぼくは紅葉をキッと睨(にら)み、霧我には冷や汗を流しながら笑顔をつくる。


そんなぼくに、霧我は眉を寄せて見つめてくる。





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