chapter:★猿だって木から落ちるんだよ★ だけど、ぼくは知っている。 彼の洞察力がずば抜けていて、さらには思いのほか口が軽いという事実を――。 その部分がすべて校長先生の好みにヒットしたんだと思う。 見事副会長の座を我が物にした。 だから紅葉の言葉にはいつも注意しなければならないんだ。 だって、ほら。 今も何かよからぬことを言おうとしている。 その証拠に、ぼくを見る目つきが獲物を見るように光っているんだ。 いったい何を言うつもりなのだろう。 耳を澄ませば……。 「2人で室内にやって来るなんて、相変わらず仲がいいね」 紅葉は霧我とぼくを交互に見ている。 まさか……紅葉の言おうとしていることってっ!! 嫌な予感がぼくを襲う。 そんなぼくをよそに、紅葉は気にすることなく――。 「鈴、この分だと君の想いはすぐにでも霧我にと……」 うわわわわっ!! ぼくは、慌てて紅葉の口を塞いだ。 「むぐっ」 「俺と鈴が何だって?」 霧我は、口を塞いでいるぼくと塞がれている紅葉に怪訝(けげん)そうな顔をして、尋ねてくる。 なんだかとっても不機嫌そうだよ。 だけど、今はそんなことにかまっている暇なんてない。 「それはだね、霧我くん」 紅葉を戒めるぼくの手が少し緩まったせいで、彼から言葉が発せられる。 うわわわわわわ!! 「むぐっ」 もう一度、ぼくは慌てて紅葉の口を塞いだ。 「なんでもないんだよ!! あ、あははははは!!」 もう!! もうもうもう!! 紅葉、いい加減にしてよ!! ぼくは紅葉をキッと睨(にら)み、霧我には冷や汗を流しながら笑顔をつくる。 そんなぼくに、霧我は眉を寄せて見つめてくる。 |