眠れない夜が終わる日を


敵を任せてくれないかと轟たちに言って歩き出した緑谷をみた
(俺はなにをしてるんだ・・・!)緑谷の強い意思を感じて止めるのをやめてしまった自分に苛立ちを感じた
飯田は静かに言った「緑谷くんが危険な状態だと感じたらすぐに攻撃する」
その場の全員が頷く
ヴィランに歩み寄る緑谷は緊張していた(薄暗くて見えないな・・・ライトの下で確かめないと)
近づいてくる緑谷にスパーダがピクリと反応するゆっくりと片腕を上げ赤い結晶の剣を作り上げる
緑谷は相手を捕らえる為に足めがけて走りこむ ヴィランは捕まれる瞬間後ろへ飛び逃げる
(簡単にはいかないか)
今度はヴィランが走り出し剣を緑谷に突き出す顔の横を間一髪で避けた緑谷はすかさず相手の服を掴もうと手を伸ばすが
どこから出てきたのか、スパーダの赤い結晶が緑谷の手のひらをかする
「!!・・・いっ!」
手をおさえ後ろへ距離をとる緑谷にみて敵は両腕を前の皆がいる方へ向ける
その瞬間赤い結晶が弾丸のように生徒全員にめがけて撃ち放たれ、緑谷は後ろを振り返る
「轟くん!」
轟は向かってくる攻撃を氷の壁を作り止める
「うっわあぶねっ轟ナイス!」
油断していた上鳴が親指を立てながらよくやったと言わんばかりの表情で見ていた
「・・・これ、血ですわね」
八百万が轟の氷に止められて刺さったようになっている赤い結晶を調べようと触れると砕けてさらさらとスパーダのほうへ戻っていく
「・・・無事か」
すぐそばのドアが静かに開き幻間を塚内に預けた相澤と爆豪が到着する
「先生!今デクくんがあのヴィランを任せて欲しいって・・・何か確かめたいことがあるみたいで・・・」
心配そうに緑谷を見つめながら麗日が説明した
皆の無事を確認した緑谷が向き直る
じりじりとスパーダが距離をつめ、教壇を斬りつけ、出来た破片を緑谷へ蹴る緑谷は目を守る為に両腕で塞いだが
その一瞬の隙を狙って敵の蹴りが緑谷のわき腹に強く入り投げ飛ばされた
「緑谷!」遠くの方で切島が心配する声が聞こえる
ゆらりと立ち上がる緑谷に敵が間髪いれずに細い小さい血の剣を無数作り出し、投げる
蹴りの反動と強く頭を打ったせいでくらくらしていた緑谷の身体の周りに敵の小さな剣が刺さり地面に張り付けられたような状態になった
それをみて麗日や飯田たちが飛び出すそれに続いて他の皆も走り出す
「デクくん!!!」
スパーダが大きな血の剣を構え、緑谷の上に覆いかぶさった
その瞬間大きな音がしたかと思うとホールの壁に大穴が開き、土煙からオールマイトが現れる
生徒の無事を確認しようと皆の姿をみるが彼らは、ある一点に個性を発動させながら走り出していることに気付き
飯田たちが助けようと近づく 相澤も個性を発動させている オールマイトも緑谷の方へ走り出す
スパーダが血の剣を振りかざした、その時、敵の姿を間近で確認した緑谷は確信し、思い切り 叫ぶ
「心理お姉ちゃん!!!!」
ぴたりと敵の動きが止まる仲間達はぎりぎりで近づくのを止めた剣はもう刺さる寸前までいっている
その直後、心理と呼ばれた人物の身体から幽霊のようなものが浮き出て後ろへ転げ出る
((うっ!))
すかさず八百万が自身の身体からロープを生成しその人物を捕らえた
「八百万、そいつは一応被害者だが、油断するな もうじきばあさんが治療しに来るから後は頼む」憑駒が無理やり従わされていたのを知っていた相澤が静かに言う
憑駒はよろよろと立ち上がり八百万に支えられながらすれ違う相澤に会釈をした
「・・・・そう、だよね?」
未だぴたりと動きが止まっているスパーダに緑谷は不安げに尋ねる
「・・・ぃ、・・・・」
血の剣が消え去り脱力する
目線は緑谷の姿をとらえていない様子だったがかすかに言葉を発したように聞こえた
「やっぱり!、」
身体を起こし心理の様子を確認しようとした時だった
穴の開いたホールの方から勢いよくナイフが飛び、心理の背中に突き刺さる
心理の顔は虚ろなまま、緑谷の前に倒れこんだ
「!?お姉ちゃん!?」
心理を抱きかかえ声をかけるその場にいた全員がナイフの飛んできた方向をみた
「ハァ・・・!くそっ台無しじゃねぇか兄貴すまねぇ折角ムショから出してくれたのに・・・! 憑駒が爆発してねぇ・・・装置が壊れたかいや幻間の野郎は捕まったのか」
ぶつぶつと言うその男はオールマイトを追ってやってきた堅身闘拳だった
(ホーリーシット!)オールマイトは目の前の光景に気をとられていた自分のミスに怒った(あの速度に追いつくとは・・・だが今は戦うより生徒を優先だ)
「生徒諸君下がりなさいここは私が、」
オールマイトが構える一組の生徒に促したその時緑谷が走り闘拳に殴りかかる
「少年!待ち、・・・ぐっ!?」
オールマイトは限界が来ていた身体から徐々に煙があがる時間がもうないのだ
殴りかかった緑谷のワンフォーオールの拳が闘拳の顔にはいる
にやりと笑った闘拳の身体が膨れ上がりそのまま緑谷の首を掴み上げた
「いてぇじゃねぇか」
ミシミシと頭を捕まれ、持ち上げられた緑谷はなんとかしようと闘拳の腕を掴むが力が入らない
「調子に乗んじゃねぇ死ね筋肉馬鹿が!!!!!」
爆豪が飛びかかり、闘拳の身体に向けて爆発させる
すかさず轟が闘拳の足元を凍らせ、常闇が個性で緑谷を掴んでいる手を捕らえる
切島と尾白がその捕らえている腕に攻撃をし掛け、相澤が闘拳の身体を捕縛した
その間、オールマイトは他の教員たちの手により姿は隠されたが、制止の声も聞かずに緑谷の元へ行こうと手を伸ばしていた
「・・・・っか・・!」
緑谷の意識が徐々に薄れていく
「必死だなぁ、おい?」
闘拳の身体が更に大きくなる 攻撃が効いていないことに気付き爆豪たちが後ずさる
「お返しだ」
グッと緑谷を掴んでいる手に力が入り周りの空気が震える
思わず走り出すトゥルーフォームに成りかかったオールマイトは闘拳がその後何をするか知っていたあの衝撃に緑谷の身体は耐えられない「緑谷少年!!!!!!!!」
その直後闘拳の身体から無数の血の剣が突き出す
「ぐああああっ!!?」
身体の中からの攻撃に苦しむ闘拳は血だらけになりながら悶え緑谷を手放した
「お、まえ・・・!!!いつ・・・俺の中に仕込み、やがった!!!?」
麗日に抱えられた虚ろな目をした心理が片手をあげ手のひらを闘拳に向けている
捕まっている"誰か"を救うため無意識に個性を使ったというのだろうか 緑谷に気付いている様子も無く、ふらふらと崩れ落ち膝をついた
怒り狂った血だらけの闘拳が心理に近づくと、憑駒が走り、間に立ち両手を広げる
((けっ闘拳さん!!もうやめてくださいっ!!あっ貴方はあの人に騙されて・・・))
「邪魔すんじゃねぇ役立たずが・・・平和の象徴を潰しそこねた、個性を全力で試せなかった・・・もういいその女を俺の個性で潰してやる」
冷静ではない闘拳はぶつぶつと目的を果たせなかった苛立ちを呟き、衰弱している心理に狙いを定める
憑駒は泣きながら震える身体を抑えながら心理の方に向き直る
((骨継さんっ!今すぐこの場から逃げてください!!もう一人が、))
"来る前に"そう言葉を続けた時だった憑駒を殴り飛ばす闘拳の身体を黒い刃が貫き更に飛ばされた憑駒の足をも貫く
たて続けに起こる光景にその場にいた全員がただ見ていることしかできなかった
「あれは、ナーゲル、グラディウス・・・!?」
刃が放たれた先に立っていたのは引退したはずの英雄だった
「助けに、来てくれたのか・・・!」
思わぬヒーローの登場に周りが沸く 攻撃を受けた堅身は気絶していた
もう大丈夫だと一組全員の顔に安堵の表情がうかぶ切島と飯田がその隙に緑谷を支えて移動する
ホールでの出入り口では他の教員達が徐々に加勢に駆けつけていた
「遅れたようだ申し訳ない」
「いや、助かりました が、」
やり過ぎです、と相澤が倒れている闘拳と憑駒を見ながらナーゲルグラディウスに言う
憑駒が闘拳に殴り飛ばされていなければ刺さり所が悪く死んでいたかもしれない、刃は迷い無く的確に相手の動きを止める為に放たれた物だった
「ふむ・・・確認をすべきだったなすまない、ッ!?」
ナーゲルに向けてナイフが投げられナーゲルはそれを弾く
心理が自身に刺さっていたナイフを引き抜きナーゲルに投げたのだ
「・・・・・・敵が残っているようだが?」
今まで虚ろだった心理が立ちあがり、その見開かれた紅い瞳にはナーゲルの姿だけを捕らえている
「そいつは・・・」相澤が制止しようとしたがナーゲルは聞いてない様子だった
「相澤くんすまないが今すぐ全員を避難させてくれ、遅れた詫びといってはなんだがこのヴィランは私がなんとかしよう」
ナーゲルの様子に違和感を感じた相澤だが、確かに今は幻覚を見せられ精神的にも疲労困憊であろう生徒たちを避難させるのが先だった
加勢に来た教師たちが闘拳捕らえ、生徒を連れ出て行く、
「緑谷!お前そんなふらふらの状態でどこ行くんだ!?」
切島が心理の方へ行こうとする緑谷の肩を掴む
「全くだ緑谷くんここは、」
「飯田くん・・・行かなきゃ、あの人はヴィランじゃないよこんなことする人じゃないんだ」
すぐ傍で手当てを受けた憑駒が相澤に担がれていた 憑狗は弱々しくすれ違う緑谷の服を掴み、声をかけた
((ボク、が、こんなこと言う資格ないけど、彼女とあの人を戦わせちゃ駄目なんだ、お願い、緑谷くん、彼女が壊れる前に、))
「どういうこと・・・?」
「幻間に色々聞いたが憑駒と言ったな、俺は今判断しかねてる、聞かせろこの状況の訳を "どっちが、本当のヴィラン"だ」
彼の意味深な発言に疑問を抱く緑谷の後ろで相澤が問いかける
そ、それはあの言いたいんだけどその過去に関わるから、と、おどおど言葉を濁す憑駒をみて緑谷は彼の手を取り真剣な眼差しを向けた
「姉ちゃんは、こんなことする人じゃないんだ・・・僕にとって彼女はヒーローだったから・・・なにがあったのか、教えてくださいお願いします」
((・・・人の過去を他人に軽々しく話すものじゃない・・・けど、ボクが言うのも変な話だよね・・・
彼女の過去の中で君の姿があったんだ、君なら、緑谷くんなら、・・・・・・・いや、君だけじゃないヒーローを志す君たちなら))
"彼女を救う為に、話すべき人たちなのかもしれない"、そう言って憑駒は、心理の過去を話し出す決意をする
涙を浮かべながら話そうとする男を見た、その場に覚悟を決めたように緑谷が頷く
「僕は心理姉ちゃんを助けたい、ああなってしまった苦しみを理解したい、何も知らないままあの戦いの間に入ると、」
"姉ちゃんは本当に"あっち側"へ行ってしまうかもしれない"ぐっと涙を堪えて憑駒を見る「憑駒さんお願いします」
((解った・・・ここからは真剣に 彼女を助けると決めた人達だけここに残ってほしいんだ、そして、))

彼女の帰るべき居場所を作って欲しい


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