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続いて感じた冷気に、飛龍は眉をひそめる。

「この領主、やはり既に堕ちていたな」

魂が、荒御魂と化している。

だから神を呪うなどという事も出来たのか。

力を求め、心を闇に譲り渡したのか。

「闇が動き出しているな」

呟いて太刀を鞘に戻す。

この地は今、何処まで荒れているのだろう。

領主でさえ闇に堕ちてしまうのでは。

そして清さを歌う光さえも、本当は。

飛龍は領主を殺した自分の手を見て息をつく。

これに慣れて痛みを感じなくなる事が光を掲げる帝であるのなら、自分には無理だと何度思っただろう。

もう今更戻るなんて出来ないから此処にいるだけで。

ふと見上げる月は冴え冴えとして美しく。

あれによく似た光を、何処かで見付けた気がする。

綺麗で蒼く澄んだ輝きが、真っ直ぐに見詰めていた気がする。





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Reservoir Amulet