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体を縛り付けるのは、重たい暗闇。

それでも、それさえ自分のものだと受け止めるなら。

驚く程簡単に堕ちて行ける。

屋敷から逃げ出した領主は何もかもを見捨てて、一人夜の森の中を小走りに進んでいた。

やがて息を切らして足を止めた所で、鋭利な煌めきが走った。

木の陰から現れた人影が、抜いた太刀で素早く領主に斬り掛かる。

「供も連れず、一人で逃げて来やがったのか」

太刀に付いた血を軽く払いながら、赤羽が冷めた目を向ける。

「誰も信用出来ないのだろう。だから死を悼む者もおらぬ。哀れな死に様だな」

飛龍は太刀に手を添え、淡々と地面に倒れた領主に告げる。

「お前には此処で眠ってもらうぞ。一人寂しく黄泉路を辿れ」

「お、お前は……っ、何故……」

「何故?此処に至っても、まだ分からぬのか。豊葦原の民を苦しめ、天神の名を汚した罪を命で贖うが良い」

夜気を切り裂いて、刃が光った。

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