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「だが、ただの噂だろう?」

「かもしれぬな。しかし見ていると良い。噂が本当ならば、近い内にあちらから動き出すぞ」

不敵に口元を歪めた飛龍に、角鹿が眉をひそめて尋ねる。

「それで大丈夫なのですか。こちらからは何も手を打たずとも」

「心配するな。それももう考えている」

そう答えた飛龍を、赤羽は意外そうに見た。

「どうした?やけにやる気じゃねえか」

「何を言っている。俺はいつも真面目にやっているだろう」

「どの口でそのような事を仰いますか」

飛龍は笑い、部屋の外に目をやった。

『もう、どうして分からないの!』

雨の静けさを破る、迸る強い感情。

『貴方しかいないのよ!』

ぶつけられた真摯な気持ちが、不意に胸を打つから。

自分を信じる事は出来なくても、或いは。

信じてくれる誰かがいるなら、それも悪くないかもしれない。





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