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飛龍は近付いて来た足音に顔を上げた。

「ああ、戻ったか」

「はい。つい先程」

部屋に入った角鹿は腰を下ろし、報告を始める。

「輝夜は無事に筑紫領主、蛇集【じゃしゅう】の屋敷に潜り込みました。様子を見た限りでは上手くやっているようです。すぐに蛇集に気に入られ、側近く仕えるようになりました」

「そうか。中々やるな、輝夜も」

笑みを浮かべた飛龍を、角鹿が探るように見た。

「宜しいのですか」

「何がだ」

「彼女が信じられるという事は分かっているつもりです。しかし」

角鹿はしばらく言葉を探し、少ししてから再び口を開いた。

「しかし、彼女は何処か得体が知れません。私にはとてもただの村娘とは思えないのですが」

「ほう?」

「用意した衣をすぐに着こなしていましたし、舞もお上手です。たちまち采女の仕事を完璧にこなしていました。それに、自分なりの考えがあって貴方に付いて来た、とも」

それを聞いた飛龍が笑って髪をかき上げる。

「わざわざお前に話したという事は、俺の耳に入ると輝夜も見越していただろう。それでも尚、口にしたのは……」

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