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帝を狙い、その妃が攫われた。

筑紫の領主は帝が自分よりも愛する姫を人質とし、帝位簒奪が目的の謀反を起こした。

噂は人々の唇を介して飛び交い、瞬く間に広まった。

「この目で見ても信じられないぜ。民が自ら軍に志願して来てるぞ」

帝からの命令によってまほろばでの軍を纏めている赤羽が、驚きを隠せずに言った。

「これなら飛龍が言っていたように、脅しの効果も充分ある。血を流さずにまほろばを守り切れるなら、それに越した事はねえからな」

「はい。この調子なら高千穂の軍にも人を割けそうですね」

頷いた角鹿に向かい、赤羽が息を吐く。

「どうなるかと思ったが、こちらに向いて来たな」

「飛龍殿はこれを機に、国をご自身の元へ一つになさるおつもりなのでしょうね。かなりの荒技ではありますが」

「やれやれ、あいつはいつからこれを狙っていたんだか」

やる気があるのだか無いのだか分からない帝を思って再び溜息をつきながら、赤羽が立ち上がる。

「とにかく、俺は飛龍に報告をして来る」

「私も行きましょう。今こそ帝にはしっかりしてもらわねば」

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