02


月はいつも、静かで美しい。

宴の騒々しさも嫌いではないが、こうして一人月を眺めながら酒を飲む方が落ち着く。

この静けさも、そう長くは続かないだろうけれど。

「……やれやれ、騒がしいな」

部屋の外へと注意を向けて溜息交じりに呟いてすぐに、御簾の向こうから声がした。

「よう、飛龍【ひりゅう】。入るぜ」

「ああ」

返事をすると、部屋の中に大柄の男が入って来た。

「何だ、また一人寂しく手酌か?」

「赤羽【あかはね】、別に相手に事欠いている訳では無い」

目を上げて、腰を下ろした赤羽を見る。

衣を改めているが、体に染み付いた匂いまでは簡単に落ちない。

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