02


強く呼び掛けて来るこの声は、誰のものだっただろう。

ふと気付くと、花々が咲き乱れる野原に横になっていた。

目に映る空は何処までも青い。

風が吹き抜けると、耳元で草が揺れる微かな音がする。

美しい光景の筈なのに何故か胸が痛んで、空の青さから目を逸らせない。

あんな綺麗な色を、よく知っている気がする。

思い出してはいけないのだと自分でも分かっているのに、それでも忘れ去る事を心が拒んでいる。

しばらくそのままでいると、耳に流れる水の音が届いた。

『私の昔からの友達は、いつも水だったわ』

(……輝夜)

その名が胸に降って来た途端、飛龍は全てを思い出した。

闇の地で、突然の暗黒に包まれて。

(そうか、俺は……死んだのだな)

随分と呆気無いものだ。

意識を失う直前、輝夜の声を聞いた気がする。

ただの願望かもしれないけれど。

彼女は、無事だっただろうか。

此処にいないという事は、きっと無事だと信じたい。

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