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「月の、姫……」

呟いて隣を見ると、輝夜はただ微笑んで飛龍の腕を引いた。

「帰りましょう、飛龍」

「では、そろそろ別れの時だ」

龍眼がそう言って手を伸ばした先には道があった。

「此処を通って行きなさい。お前達の在るべき場所へ。私が言うべき事ではないかもしれないが、豊葦原を頼む」

「……最善を尽くします、父上」

「そちらの娘さんも、飛龍を頼む」

「ええ」

見送る龍眼に頭を下げ、示された道を歩き出す。

何も言わなかったけれど、輝夜がそっと手を繋いで来た。

それは堪え切れない涙が飛龍の頬を伝ったのを分かっていたからかもしれなかった。

思い掛けない再会と別れが、自分の守るべきものを改めて思い出させる。

だから帰らなくては、あの世界へ。





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