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「誰にでも、分からない事はありますよ」

それまで黙っていた輝夜が静かに言った。

「分からない事は誰にでも沢山あります。それを出会い触れ合って過ごす人達から学びながら少しずつ変わって行く。私は思っています。それこそが人の価値だと。幾らでも変わって行ける、しなやかに強かに先へ進める。それが人の強さであると」

しばらく辺りには沈黙が降り、やがて龍眼が息をつく。

「その通りだ。貴女は月の光のように気高く優しい。飛龍は良い出会いに恵まれたのだな」

先帝の瞳が飛龍へと向けられる。

「飛龍、この類い希なる娘さんを大切にな。彼女のような方には、そう出会えるものではない」

「……はい。分かっております」

頷くと、龍眼は満足そうに笑った。

「では、私は豊葦原への道を示して去るとしようか。戻るのだろう、あの世界へ」

「しかし、父上はどうするのですか」

「私は闇の女神よりお前達を導く役目を与えられただけの、死者に過ぎん。死んだ者は還れぬよ」

「俺も死んだ筈ですが」

飛龍の言葉には、否定の素振りが返された。

「お前の命はまだ消えてはいない。月の姫の祈りが間に合ったからだ。そして加護が与えられている今、黄泉路を還る事も出来る」

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