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高千穂宮の前に、二頭の馬が止まった。

慌ただしくその馬から降り立った二人を、門の前で待っていた扶鋤が迎えた。

「そろそろ来ると思っていたぞ」

「おい、扶鋤!本当なのか、文に書いてあった事は」

「ああ。残念ながらな」

赤羽の言葉に扶鋤が頷くと、角鹿が首を振った。

「……しかし信じられませんね。あの殺しても死にそうにない男が」

「とにかく二人の所へ行こう。案内する」

砦の中では、何も変わらない様子で兵達が訓練をしていた。

それを見た赤羽が静かに尋ねる。

「他の奴らは、まだ知らねえのか」

「まずは親しい者だけで別れを、と思ったからな。それに……情けない話だが、何と言えば良いのか分からなかった」

その瞳の深く沈んだ色に、角鹿も呟く。

「それは、我々も同じですよ」

無事に帰って来ると信じて、まほろばを守っていたというのに。

何と言えば良い。

今も帝を信じている豊葦原の民に。

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