02
高千穂宮の前に、二頭の馬が止まった。
慌ただしくその馬から降り立った二人を、門の前で待っていた扶鋤が迎えた。
「そろそろ来ると思っていたぞ」
「おい、扶鋤!本当なのか、文に書いてあった事は」
「ああ。残念ながらな」
赤羽の言葉に扶鋤が頷くと、角鹿が首を振った。
「……しかし信じられませんね。あの殺しても死にそうにない男が」
「とにかく二人の所へ行こう。案内する」
砦の中では、何も変わらない様子で兵達が訓練をしていた。
それを見た赤羽が静かに尋ねる。
「他の奴らは、まだ知らねえのか」
「まずは親しい者だけで別れを、と思ったからな。それに……情けない話だが、何と言えば良いのか分からなかった」
その瞳の深く沈んだ色に、角鹿も呟く。
「それは、我々も同じですよ」
無事に帰って来ると信じて、まほろばを守っていたというのに。
何と言えば良い。
今も帝を信じている豊葦原の民に。
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Reservoir Amulet