17
「…………」
その沈黙で、何を感じ取ったのかに気付いた。
『お別れなの』
以前の自分と同じ、もう二度と会えない別れを覚悟した者の持つ。
体が抉り取られる程の痛みを、必死に堪える声。
あの時、また会えると慰めてくれたのは輝夜の方だったのに。
今度は、彼女がそれを味わうのか。
どんなに覚悟しても、別れは辛く悲しい。
それを知っているから、飛龍は手を伸ばして輝夜の白い頬に触れた。
「待っているぞ、輝夜」
「飛龍?」
驚いたような大きな瞳を見詰めて続ける。
「生憎、天界まで迎えに行く事は出来んからな。だが、俺の思う民の中にはお前も入っているのだぞ。帰って来なければ許さんからな」
「……それは命令かしら?」
訊かれて、飛龍はふっと笑って頷いた。
「ああ、そうだな。勅命だ。必ず帰って来い」
その言葉に、輝夜も笑顔を浮かべる。
「全く、仕方の無い人ね。そう言われたら逆らえないって分かって言っているんでしょう」
「当然だろう。今ばかりは帝で良かったと思うぞ」
「……分かったわ。帰って来る、貴方の元へ。だからそれまで、この地上をお願い」
「任せておけ」
輝夜の纏う衣が光を放ち始める。
「じゃあ、そろそろ行くわ。またね、飛龍。どうか貴方の道行きに光がありますように」
微笑みを交わして、再会を誓って。
それぞれの道行きに光を。
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