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『此処は、人の住む世界でしょう』
以前の輝夜の言葉を、口に出して呟く。
「此処は、人の住む世界だ。だから人の手で豊葦原を支える事が出来なければ、その為に何一つ出来ずしないなら、人は永遠に此処を我が国と呼ぶ資格を失ってしまう」
「飛龍なら出来るわ。そう信じているから、私は貴方の側にいようと決めたのよ。地上は貴方がいれば大丈夫よね?私は天上で、もう一度機会を願い出て来るわ」
「機会?」
聞き返すと、輝夜は長い睫毛の瞼を下ろして言った。
「永久に生きる神から見れば、短い生の中争いを繰り返す人は愚かに見えるかもしれないわ。けれど、私は知っている。人と触れ合う温もりを、誰かを想う気持ちを、短いからこそ懸命に今を生きる人の美しい輝きを。だから人々がもう一度やり直す為の機会を願う。貴方の統治の下での平和を信じて」
「だが、お前は大丈夫なのか?人を庇って無事で済むのか」
「……大丈夫よ。天界で、自分のやるべき事は果たすわ」
輝夜の声音に何かを感じて、飛龍は重ねて尋ねた。
「それが終わったら、また会えるのだろう?」
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Reservoir Amulet