02


高千穂にある村は静まり返っていた。

村人の顔には覇気が無く、皆息を潜めるように暮らしている。

「……確かにひどいな」

飛龍は低く呟くと、村の至る所に領主の手下と思われる者が立っているのを確認した。

(反逆を恐れてか。気の小さい奴の考えそうな事だ)

さり気無く監視の視線から外れる所を探して、丁度通った村人に話し掛ける。

「こんにちは」

村人は足を止め、胡散臭そうに飛龍を見た。

「何だい、見ない顔だが旅の人かね」

「はい。たまたまこの辺りを通り掛かったから寄ってみたんですが、少し村の様子が気になったもので」

「悪い事は言わないよ、早く出て行った方が良い」

肩に大きな水瓶を乗せた老婆は、声を小さくして続ける。

「あんたは男の人だから大丈夫とは思うけどね、領主様は娘という娘を皆連れて行っちまったんだよ」

「娘を?」

聞き返すと、老婆が涙ぐんだ。

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