02
あの時抱き締めてくれた理由を、訊きたいけれど訊けない。
何かがずっと心を捕らえているようで。
貴方に話したら、答えをくれるだろうか。
教えてくれるだろうか。
この胸の痛みと、切なさの理由を。
でも、どう言えば良いのか分からない。
残された時間は、あと僅かしか無いのに。
そう、あと少ししか。
「…………」
目を開くと、明るい朝の光が射し込んでいた。
随分長い間眠っていたようで、頭がぼんやりしている。
見回した部屋には、確かに見覚えがあった。
(此処は、高千穂宮……?)
夜具から出て廊に顔を出すと、飛龍の声が聞こえて来た。
ほっと息をついて、そちらに向かって歩き出す。
声がする部屋を覗き込むと、そこにはよく見知った顔が揃っていた。
「全く黙って抜け出したかと思えば、いきなり高千穂に来いなどと。貴方は勅命を無闇に下し過ぎですよ」
「本当だぜ。振り回される身にもなってみろっての」
「この帝では、そうしないと誰も従う者がいないからだろう」
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Reservoir Amulet