02


季節は巡り、穏やかな春が来た。

宮中で暮らす人々も何処か華やいだ気持ちで、時折足を止めては庭の花に目を細める。

急いでいた赤羽も廊に舞い込む花びらを見て、思わず立ち止まった。

(いい季節になったもんだな)

それから我に返り、再び歩き出した。

目的の部屋に着いて、中を覗き込む。

「角鹿、飛龍は何処に行った?」

「さあ?」

角鹿は目を向けて、興味が無さそうに応じた。

部屋の中には主である飛龍の姿は無く、代わりに側近が仕事をしている様子である。

「きっとまた抜け出して、そこらをほっつき歩いているのでは?」

仕事の手は休めずに角鹿が言うと、その場にいた扶鋤が溜息をついた。

「俺が来ているし、いなくても良いとか考えたんだろうな」

扶鋤は最近、軍の事で部下と共にまほろばを訪れている。

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Reservoir Amulet