18


飛龍の視線の先で、月が流れる雲に隠れた。

杯を置き、目を閉じると不思議な感覚がある。

まだ騒ぐ感情はそのままに、頭だけは妙に冴えている。

夢か現か分からない狭間で、飛龍はその声を聞いた。

『光と闇に生きる帝、貴方はやがて世界を変えるでしょう。その為に私が行くから、待っていて』

閉じた瞼の裏で、輝く衣がふわりと揺れた。

それを纏うのは、同じように輝く長い髪の。

眩しくて、その姿はよく見えない。

あまりにも神々しくて恐ろしい程なのに、目を逸らせない。

こちらに白い手が伸びて来て、頬に触れそうになる。

涼やかな声が、そっと囁く。

『会いに行くから、待っていて』

そこで、飛龍ははっと目を覚ました。

(眠っていたのか)

部屋には変わらず、静かな夜の気配が満ちている。

あまり時間は経っていないらしい。

何か夢を見ていたような気がするが、よく思い出せない。

飛龍は再び杯を満たして月を見上げた。

夜は静寂の中、深く更けて行く。

いつとは知れぬ夢の静寂で心は遥か、君を待つ。





- 46 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet